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道化師(クラウン) ラストラーダカンパニー
チャン ロントChangさん LONTOさん
名古屋市に生まれ、名古屋市を拠点に活動しているラストラーダカンパニーのChangさんとLONTOさん。上海万博・ミラノ万博・エジンバラ国際フェスティバル出演など国際的にも活躍し、クラウンの世界大会 WCAコンベンションで金メダル受賞の経験もあるお二人。2023年4月には「らふぃゆれふぃゆ」がこども家庭庁令和5年度児童福祉文化賞推薦作品に選ばれました。そして、Changさんは名古屋市文化振興事業団第37回芸術創造賞、LONTOさんは令和4年度愛知県芸術文化選奨文化新人賞を受賞。北海道から沖縄まで日本全国を飛び回り、忙しい毎日を送っているお二人にお話を伺いました。
(聞き手:吉田 明子)
子ども時代のお二人
Chang:小さい頃は運動が嫌いで走るのも遅く、勉強も苦手でした。3人兄弟の末っ子で、年の離れた兄たちが優秀だったため、比べられるのが嫌で、「勉強も運動もしません」と言って生きていました。頑張り方もわかりませんでした。でも、食べることが好きだったので、小学生の頃から休日は、家族みんなの昼食を作るほど料理は得意でした。だから、将来は料理人になりたいと思っていました。
LONTO:子どもの頃は、ゲームやおもちゃ・漫画などを買ってもらえない家だったので、ゲームやおもちゃは自分で作っていました。自由帳に自分でスーパーマリオなどファミコンの絵を描きBGMを口ずさみ、それで友達とゲームをした気になって遊んでいました。
高校生くらいまでは人とコミュニケーションをとるのが好きではなく、自分の世界を楽しむタイプでした。でも、表現をしないだけで、心の中には思っていることや言葉がたくさんありました。ごく稀だけれど、そんな自分の心の内面を観てくれる人に出会えた時は嬉しかったです。
クラウンとの出会い
Chang:高校2年生の時に、たまたま新聞の折り込み広告で、クラウンの専門家チームのプレジャーBによる半年がかりのクラウン養成講座があることを知り、母が「面白そうね」と言ったのがきっかけでした。料理人の道に進むつもりだったので、海外に修業に行った時に芸があれば何かの助けになるかもと思い受講することにしました。その講座の受講生は社会人が多く、僕一人だけ高校生だったので、たくさんの人にかわいがってもらいました。受講後も調理師の専門学校に通いながら、お祭りやイベントに連れて行ってもらって出演したりと、手伝いのようなことをしていました。
LONTO:高校では友達と同じ演劇部に入りましたが、ずっと裏方のスタッフをしていました。高校を卒業した後は就職しましたが、毎日同じような仕事をしているうちに、「自分はなぜここにいるのか」と悩み1ヶ月で退職しました。その後、自分の好きなことを仕事にしたいと思い、演劇か芸の道に進もうと決めました。〝演劇はひとりではできないけれど、芸人は自分ひとりでもできるのではないか″と考え、プロの芸人を目指すことにしました。芸の道に進むと決めてからは、独学でパントマイムの練習をしていましたが、クラウンの勉強もしておいた方が良いと思い、プレジャーB のクラウン養成講座を受講しました。
前列左がChangさん、一人置いてLONTOさん(2007年)
その後本格的にクラウンの道へ
Chang:楽しくて肌に合っていたため、その後もプレジャーBに所属してクラウンを続けていました。次第に自分と同世代の仲間が増えていき、一人でパフォーマンスを行うのではなく、チームで公演をしたいという意識が強くなりました。その中の一人がLONTOです。
どっぷりクラウンの魅力にのめり込み、2005年には日本国際博覧会(愛・地球博)でレギュラーパフォーマ―としても活動しました。気が付いたら専門学校を卒業して8年経っていました。料理人になることは忘れていませんでしたが、ある時、兄に「お前も頑張ってるよな」と言われたんです。小さい時はうまくいかないと「もういいや」と思っていましたが、これが頑張るということなのかと初めて気が付きました。頑張れば結果が出て、人に喜んでもらえる。提供して喜んでもらえることは料理人と同じだと考えるようになりました。クラウンは「自分が力を注げるもの」だとわかり、その後は迷うことも、やめようと思うこともありません。その頃から海外での活動も増え、海外向けの作品も作り始めました。
LONTO:役を演じる俳優と違い、クラウンは常に自分です。パフォーマンスをしていない日常においても自分が変わっていくのがわかりました。パフォーマンスをすることで自分の心がほぐれていくのを感じ、すごく笑うようになったんです。技術を習得することは難しいことですが、それすらも楽しく感じることができるようになり、人生観が変わりました。
観客である子どもたちは、言葉を使って伝えなくても、何かを感じとって声をかけてくれます。そんな子どもたちのように感じとってくれる人が増えていけば、救われる人がいると思います。
ラストラーダカンパニーを設立して6年目に
Chang:幅広く何でもやるのではなく、「自分たちにしかできないことを、自分たちが届けられる相手に届けよう。二人でオリジナルをつくり、心躍るときめくパフォーマンスをしよう」という思いで、LONTOと二人で2018年1月にラストラーダカンパニーを立ち上げました。その思いを形にできて、とても充実した楽しい毎日を過ごしています。
LONTO:20年間突っ走ってきたので、そろそろ大衆に好まれる作品創りからは方向を変え、自分の思想や世界観を追求した作品創りをしていいのではないかと考えました。言葉の美しさも深さも便利さも知っていますが、その表現の専門家はすでにたくさんいらっしゃる。私たちは自分たちの表現として言葉を使わない舞台を追求していきたい。言葉なき相手の中にある心の声を感じ、目で見て聞く。人は心の中の言葉の方が声を発して伝える言葉よりもたくさん持っているのではないでしょうか。その沈黙の中にある言葉を感じる、それはとても美しい瞬間。思いやりに繋がると思っています。そんな作品を丁寧にこだわりながら創っていきたいです。今はいろんなアーティストと直接話ができ、すぐにクリエイションできるのがとても楽しく心地いいです。
Chang:コロナ禍で公演数は減りましたが、仲間と助け合いながらここまでやってくることができ、とても感謝しています。また、ラストラーダを立ち上げた時、他の団体からも運営方法などを教えていただき、大きな力になりました。今は、先輩たちから受け継いだものを次の世代につなげる手伝いを精一杯したい。そして、長く続けるために健康と事故には気を付けて、やりたいと思ったことは、機を逃さず敏感に捉えていきたいと思っています。
-互いに信頼し尊敬しあえるアーティストとして活躍されている、ChangさんとLONTOさん。これからもますますのご活躍を期待しています。
