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随想

舞踊家

かとう おりは

加藤 おりは

スペイン舞踊団Company DANZAC、五十鈴たたら舞主宰。平成30年度名古屋市芸術奨励賞 令和3年度名古屋市民芸術祭舞踊部門特別賞〈風焔賞〉、令和3年度愛知県芸術文化選奨文化賞を受賞。

わたしの信じる、うつくしさ

 うつくしさを思うとき、亡くなる前日の父の笑顔、そして祖母がぎゅっと握ってくれた手のあたたかさ…。泣きたくなるような、とても深く心をやりとりした感覚が広がります。いつかそんなふうに踊れるようになりたい、人と関わりたいと思います。

 わたしは小さいころ、言葉にひどく混乱してしまう時期がありました。相手が、何を伝えたいのか理解できないし、自分も伝えられないので、一人で空想している時間が長かったです。現実はどこにあるのか分からないような日々でした。
 植物が好きで、よく眺めたり、話しかけたりしながら、そのエネルギーに助けられていたので、人はこんなに不完全なのに、完璧なうつくしさを持つ自然界の頂点にいるように振る舞うのは、どうしてだろう、と思っていました。
 人生の進路を決めるときに、「うつくしいと感じることができるのは、人間だけ」という言葉に出会い、霧が晴れるように、自分の生きていく意味をみつけた気持ちになったことを、今でもよく覚えています。
 そして、たくさんのうつくしさをみつけたいと思い、舞踊家として生きることを決意しました。幼少期のことがなかったら、この道を選ばなかったように思います。

 作品をつくるときはいつも、子どものころからずっと変わらず心の中心にある、水晶のようなものに触れに行きます。触れていると、すべてを超えていく感覚が確かにあり、わたしと、作品のエネルギーの源はそこにあるのかな、と思っています。とてもうつくしく、一体感があり、自分が生きていることを受け入れることができるし、自分以外の誰かも、世界も、受け入れることができる。
 境界線を超えた何かをつくることに強く興味があるのは、証明したいのかもしれない、あらゆるものは繋がっていると。

 自主公演「燿変 リズムに焼成される身体 dance×haiku」以来、この数年、俳句とスペイン舞踊を融合した作品を俳人の馬場駿吉先生と合作、共演を続けています。言葉と舞踊。言葉は世界とわたしを分断するものだと感じていたわたしにとって、大きな挑戦でした。
 2025年6月末には、俳優の布施安寿香さん(SPAC)と共演します。言葉に身体はどんな反応をするのか、その行き着く先をみてみたい。
 異なるジャンルのエネルギーはそのままに、形式を超えて本質で繋がること。
 あらゆるものが一体となった宇宙の根源の景色、自然の力の極められたような場所で、わたしはこれからも、自分の信じるうつくしさに挑戦していきたいと思います。