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1年をふりかえって
邦楽 邦舞

CBCテレビ調査役・金沢大学共同研究員 北島 徹也 さん

 歌舞伎界を題材とした映画『国宝』の歴史的なヒットの影響を受け、『吉例顔見世』(10/11~26 御園座)も昼の部が完売、襲名披露の八代目尾上菊五郎と菊之助の「京鹿子娘二人道成寺」は大きな拍手に包まれた。

 西川流の『名古屋をどりNEO 傾奇者』(10/11、12 岡谷鋼機名古屋公会堂)は『元禄おんな忠臣蔵』と題し、冥界での忠臣蔵後日談。フィギュアスケートの高橋大輔をゲスト出演に迎えた〝NEO 舞踊劇〟だが、エンタメ演劇のよう。観客というマーケットに古典はどう対峙していくのか、その答えの一つとして受け止めておこう。第2回『章之人の会』(4/21市民会館ビレッジホール)の「綱館」で章之人が実力を見せた。『長寿乃會』(5/24 Niterra 日本特殊陶業市民会館(以下、市民会館)ビレッジホール)もあった。

 『朱ざくら会』(5/28 千種文化小劇場)は〝クラシックモダン〟と銘打ち、かねてから花柳朱実が挑んでいたクラシックやミュージカル、タンゴの日本舞踊での表現を集大成、こちらは古典の身体表現での、現代への対峙である。

 五條流は『珠園会』75周年記念公演を御園座で開催(7/20)、園美と麗の、かっちりとした「吉野山」のほか、門弟も大いに活躍、殊に園八王と美佳園の「二人椀久」は感銘を刻んだ。園美は主宰する「創の会」の『お江戸の賑わい小品集~生の演奏と日本舞踊~ お話を交えた優雅なひととき』(12/13、14 名古屋能楽堂けい古室)で少人数の会場ながら気の入った会を企画した。

常磐津「吉野山」(左から)五條園美、五條麗

 『赤堀会』(6/8 市民会館ビレッジホール)で加鶴繪は粋な装いの「都鳥」、創作舞踊『瓢箪から駒』は次々に飛び出す奇想天外な曲と衣裳に驚かされつつ楽しむことができた。『内田流舞踊発表会』(10/5 市民会館ビレッジホール)で有美は「お祭り」、寿子は創作「寂~建礼門院」で枯淡を表現。

 瑞鳳澄依は『芸術鑑賞会~日本の伝統文化を未来の子供たちへ~』(9/23 市民会館ビレッジホール)で長唄の名曲「虎狩」、登場人物の踊り分けが巧みだった。

 稻旺由将は『沢潟会』(4/26、27 市民会館ビレッジホール)での「妹背山道行」で気を吐いた。

 2025年で印象に残った舞台は「やっとかめ文化祭DOORS」の一つ『新作日本舞踊「生きとし生けるもの」』(11/8 名古屋能楽堂)である。一幕で各流派の若手舞踊家がそれぞれJ-POPを中心に選曲し構成した舞台に息を呑まされたが、結no KAI(稲垣舞比、内田有美、工藤彩夏、五條美佳園、西川古祐、花柳磐優、結月櫻)の振付・演出による、二幕の新作「生きとし生けるもの」は、生命なるものの誕生から成長、宿命としての死、そして新たな生命の芽吹きを表現し、日本舞踊の表現の可能性を示した、再演に耐え得る作品である。

やっとかめ文化祭 新作日本舞踊「生きとし生けるもの」
(11/8 名古屋能楽堂)

 長唄は、杵屋勝桃・勝千華『桃華の会』(5/11 昭和文化小劇場)が楽団ももはなの年少演奏家とともに、杵屋見音代・見佳『見音代会』(5/31 今池ガスホール)は立方を入れた「都鳥」、『杵三会』(8/10 今池ガスホール)は昨年度名古屋市芸術奨励賞受賞の記念として能楽とコラボした創作「吉野天人」が興味深く、杵屋六秋・六春『長唄おやこ会』(11/8 今池ガスホール)は「五代目杵屋勘五郎の世界」をテーマに催された。

 箏曲正絃社は創立60周年記念で御園座公演『看雲聴水』(9/23)を、回り舞台を用いる「回転木馬」をはじめ、野村正峰の衣鉢を継ぐ多くの門弟と人間国宝 野村峰山、野村祐子家元ファミリーで盛大に催された。

 恒例の『名古屋邦楽大会』(11/23 中電ホール)、また、一昨年終会した名吟会から有志で新たに立ち上げられた『名邦会』(11/1 御園座)が名妓連 金丸卒寿の祝賀も兼ねて催されたのは〝芸どころ〟の意地であろうか。