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バレエダンサー
はせがわ もとし長谷川 元志 さん
音楽の波に乗って
長谷川元志さんは神澤千景バレエスタジオ所属で、中部地区を中心に活躍するバレエダンサー。
2025年10月開催の第46回中部バレエフェスティバル『眠れる森の美女』では青い鳥を好演。また、令和7年度名古屋市民芸術祭特別賞受賞作品、アカデミー国枝バレエ2025公演『シンフォニー・ファンタスティック~ある男の物語~』では主演を務めた。活躍を続ける長谷川さんに、バレエと向き合ってきた歩みと、これからについて伺いました。
(聞き手:大寺 資二)
バレエを始めたきっかけは?
特に強いきっかけがあったわけではありません。小さい頃から水泳やピアノなど、さまざまな習い事をさせてもらいました。水泳ではすぐに上級クラスに上がり、ピアノでも早くからコンクールに出られるようになるなど、器用なタイプだったと思います。ただ、どれも長続きはしませんでした。小学4年生の頃、妹がバレエを習っていたこともあり、「何もやっていないなら、やってみたら?」という軽い一言がきっかけで始めたのがバレエです。最初は正直、嫌でした。男の子は自分一人、レッスンは基礎ばかり、先生は厳しい(笑)。それでも、神澤先生のもとでなければ、きっと続かなかったと思います。中学生の頃、コンクールに出場した際に、男性ダンサーが多く出場していて、しかも皆とても上手だった。「こんなふうに踊れたら楽しいだろうな」と感じ、少しずつ本気でバレエに向き合うようになりました。
ただ、将来の職業にするつもりまではなく、大学進学を考えていた高校1年生の夏、同じバドミントン部だった友人が突然亡くなるという出来事がありました。テレビのニュースでも取り上げられ、「自分はこのままでいいのか」「恥ずかしくない生き方をしたい」と強く思うようになり、バレエを本気で続けていく決意を固めました。
(小学生の頃)
(2006年3月)
影響を与えてくれた出会いは?
レッスンに励む
何よりも大きな存在は、神澤千景先生です。 「コンクールに一度出てみよう」「次は発表会に出よう」「今度は男性がたくさん出演する舞台があるよ」――先生はあの手この手で、常に僕のモチベーションを引き出してくださいました。当時の僕は断れない性格でもあり(笑)、その度に「はい、そこまで頑張ってみます」と続けてきました。そうしているうちに、気づけば努力は楽しさへと変わり、今の自分に繋がっています。もし神澤先生との出会いがなければ、僕はきっとバレエの世界にはいなかったと思います。
外部のバレエ団にゲスト出演するようになった21歳の頃。神澤千景バレエスタジオ15周年記念 第8回発表会『シンデレラ』で、初めて全幕作品の王子を踊らせていただきました。もともとネガティブな性格なので、「本当に僕で良いのだろうか」と不安もありましたが、振付の篠原聖一先生から細やかにご指導いただき、無事に踊り切ることができました。この経験は、大きな自信となりました。
そしてもうお一人、振付家の市川透さんとの出会いです。市川さんは非常に独創的な作品を創られる方で、クラシック作品であっても既存の物語にとらわれず、ご自身で深く物語を紐解いていきます。創作作品の主役を踊らせていただいた際、「なぜそうなるのか」を一歩手前ではなく、もっと前段階から考えることを求められました。
それまでの僕は、与えられた振付を正確に踊ることに意識が向いていました。しかしその経験以降は、神澤先生のもとでのレッスンを土台にしながら、自分なりに解釈を重ね、役と向き合うようになりました。どこまで出来ているかは分かりませんが、今も踊りに向き合う姿勢の核になっています。
僕は東京や大阪、海外のバレエ団に所属しているわけではありません。以前は少し意地もあり、「所属していなくても、どこかのバレエ団から招かれて主役を踊ること」が夢でした。
そして2022年10月、関西の法村友井バレエ団で『ラ・シルフィード』全幕の主役を踊らせていただきました。その舞台は、まさに夢が叶った瞬間であり、今も強く心に残っています。 出会いが、今の自分をつくっている――そう実感しています。
Fumio Obana( Officeobana)
ダンサーとして心がけていることは?
踊る際に一番大切にしているのは音楽です。振付は必ず音楽に沿って創られているものなので、常に音楽の流れや波に乗ることを意識しています。 以前、音楽をとても大切にされている振付家の山本康介さんの作品に出演した際、「自分が大切にしてきた考え方は間違っていなかったのだ」と、あらためて確信しました。
一方で、年齢とともに怪我と向き合わざるを得ない時間が増えてきました。以前であれば「多少の無理は何とかなる」と精神力でカバーし踊れましたが、今は通用しなくなってきたと感じています。足首や膝など、無意識に使ってきた部分に歪みが生じ、身体全体のバランスの崩れを実感するようになりました。その危機感から、最近はピラティスというエクササイズの技法を取り入れ、体幹を正しい位置に戻すこと、筋肉を正しく使うことを意識しています。怪我は怖いものですが、同時に自分の身体と真剣に向き合うきっかけにもなっています。
バレエをやってきて良かったこと、そしてこれからの抱負は?
多くの選択肢がある中で、バレエの世界を選んで本当に良かったと思っています。違う道に進んでいた自分を想像することはできませんが、今こうして幸せだと感じられるのは、踊ることが好きだから。この選択に満足しているからだと思います。苦しいことはたくさんあります。それでも、それ以上に楽しい。どれだけ身体が痛くても、舞台に立った瞬間、不思議と気持ちが切り替わり、楽しさが勝つ。そんな経験を何度も重ねてきました。この仕事に就けたことに、心から感謝しています。これからも毎回新鮮な気持ちで舞台と向き合い、楽しみながら作品を創り、踊り続けていきたいと思います。これまでは、踊ることに専念して歩んできましたが、最近は神澤バレエスタジオで指導に携わる機会をいただくようになり、バレエダンサーたちが成長していく姿を見ることに大きな喜びを感じるようになりました。これからは自身が踊り続けることと同時に、指導者として、次の世代へとバレエの魅力を伝えていきたいと考えています。
2026年 Spring号
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