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1年をふりかえって
洋楽

音楽ジャーナリスト 早川 立大 さん

 初冬の風物詩として親しまれてきた「市民の『第九』コンサート」が「ファイナル演奏会」を迎えた。オーディションで選ばれた約260人の特別合唱団、4人の独唱者、下野竜也指揮の名古屋フィルハーモニー交響楽団(以下、名フィル)が最終回に相応しい白熱の演奏を繰り広げた。名古屋市制百周年を記念して1989年に「ザ・第九」1万人のコンサートとしてスタートし、その後名称や組織を変えつつほぼ毎年開催され、今回で32回。その「生みの親」「育ての親」的な存在であり続けた大黒柱・藤井知昭さんが3月に逝去したことは「ファイナル」にとり象徴的だ。

市民の「第九」コンサート2023ファイナル演奏会
(11月26日、日本特殊陶業市民会館フォレストホール)

 [声楽]オペラでは、上田久美子の奇抜な演出が話題を呼んだ愛知県芸術劇場(以下、県芸)主催の「道化師」「田舎騎士道」(3月3日、5日、県芸大ホール)、名古屋二期会が全力で取り組んだ「カルメン」(10月14日~15日、日本特殊陶業市民会館フォレストホール)が挙げられるが、総じて公的助成金が減って青息吐息。そんな中、三河市民オペラ制作委員会のジョルダーノ「アンドレア・シェニエ」(5月6日~7日、アイプラザ豊橋)が企画力、集客力、公演水準の点で群を抜く成果を上げた。

 [器楽]名古屋市に本拠を置く名フィル、セントラル愛知交響楽団、愛知室内オーケストラ(以下、ACO)が精力的な活動を続けた。中でも創立40周年となる2023年のシーズンをブラームスの交響管弦楽作品に充てたセントラル愛知響が、毎回多彩な指揮者、ソリストにより目覚ましい演奏ぶり。第198回定期公演では、ピアノ協奏曲第1番の独奏者に迎えた名手小山実稚恵が常任指揮者角田鋼亮率いるオーケストラとともに類稀な名演奏を展開した(7月9日、三井住友海上しらかわホール)。名フィルは正指揮者の川瀬賢太郎が4月から音楽監督に就任。就任記念公演ではハイドンの交響曲第86番とマーラーの交響曲第5番を指揮して多才ぶりを披露した(4月7日~8日、県芸コンサートホール)。

 リサイタルでは没後60年となるプーランクの作品を取り上げた中堅鈴村真貴子を挙げたい。プーランクの研究解釈両面で屈指の彼女だけに「夜想曲集」や「ナゼルの夕べ」で絶妙の演奏ぶりだった。

鈴村真貴子ピアノリサイタル
(10月17日、電気文化会館ザ・コンサートホール)

 田村響はベートーヴェン、ショパンらの作品を取り上げた2回のピアノ・リサイタル(5月21日、電気文化会館ザ・コンサートホール、9月24日、宗次ホール)や、ACOとのモーツァルトのピアノ協奏曲第21番(2月17日、三井住友海上しらかわホール)で大家の風格を見せた。シューマンの室内楽作品全曲演奏に挑戦中の室内楽集団レーベインムジークは第2回から4回までを好調にこなし、並行してプーランクの室内楽作品全曲演奏の2回目も終えた(2月25日、6月17日、8月8日、3月30日、電気文化会館ザ・コンサートホール)。その旺盛な活動から目が離せない。