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- 2025年 Spring号
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椙山女学園大学教授 飯塚 恵理人 さん
2024年は名古屋能楽堂が4月から10月まで改修工事で閉館、やや寂しい一年であった。そんな中でも印象に残った舞台をいくつか紹介する。
1月21日名古屋能楽堂で、金春流による「日本全国能楽キャラバン名古屋公演」が行われた。金春穂高の《嵐山 白頭 働キ入リ》は、特に後ジテの蔵王権現がどっしりとした風格がありながら身体の切れがよく、ハタラキなど見ごたえがあった。後ツレの金春飛翔と金春嘉織の相舞もよく息が合っており、各人の日頃の修練の成果が遺憾なく発揮された。二曲目は《船弁慶 遊女ノ舞 替ノ出》。本田芳樹は前シテ静御前の序之舞が良く、後ジテ平知盛の霊は大将らしい風格を感じさせた。
(提供:公社金春円満井会、撮影:国東薫)
第29回「名古屋片山能」(3月9日、名古屋能楽堂)は片山伸吾の《巻絹》。片山のシテは神託を告げる巫女らしい威厳があり、神楽舞も美しかった。二曲目は片山九郎右衛門の《西行桜》。シテ謡は抑えた調子ながら口跡よく内省的で老木の桜の精に似つかわしかった。舞も典雅で美しく、春の夜遊の趣があった。
名古屋能楽堂の再オープンは11月2日の「やっとかめ文化祭DOORS」であった。狂言はやまかわさとみ氏作の《冥加さらえ》。井上松次郎、鹿島俊裕、今枝郁雄の三人が陽気な妖怪をおおらかに演じた。能はやはりやまかわさとみ氏の新作能《草薙神剣》。柏山聡子は大自然の力の象徴である八岐大蛇を切れの良い舞で表現した。衣斐愛は、特にミヤズヒメとして舞う場面に神話の姫らしい上品さがあって良かった。
11月3日「第45回名古屋金春会」(名古屋能楽堂)は金春穂高の《竹生島》。特に後ジテが龍神らしい迫力にあふれていた。本田布由樹の《清経 恋ノ音取》。シテを呼びだす竹市学の笛が素晴らしく、朧なシテの姿が徐々にくっきりと見えてくる様を感じさせた。
11月17日の名古屋宝生会「雪待能」(名古屋能楽堂)は衣斐正宜の《楊貴妃 玉簾》。飯冨雅介は、いつもながらワキの位を保ちつつ口跡の良さに謹厳な雰囲気があって良かった。衣斐正宜は、優美な中に仙界での孤独がにじむ楊貴妃を好演した。二曲目は和久荘太郎の《女郎花》。こちらは風雅な雰囲気の前シテと地獄の責めを受けて苦しむ後ジテを上手に演じ分けていて好感が持てた。
名古屋能楽堂休館中、狂言共同社は栄能楽堂で「さかえ狂言御洒落会」を4月から10月までの毎月一回開催した。演目も《蝸牛》《瓜盗人》のようなポピュラーなものに加えて、《文蔵》《二千石》などの「語り芸」が主眼の狂言もあり、意欲的であった。若手の井上蒼大もしっかり舞台を勤め、狂言共同社の更なる発展が期待できる一連の公演であった。
また名古屋市文化基金事業「なごや子どものための巡回劇場 狂言がやってきた」も健在で、8月20日の天白文化小劇場、8月22日の守山文化小劇場、それぞれ質の高い狂言を提供したことも述べておきたい。
