
- ホーム
- 2023年 Spring号
- 早川 立大 さん
音楽ジャーナリスト 早川 立大 さん
コロナ禍が続いているが、コンサートの開催が増え、入場制限もほぼなくなってきた。しかし、客足は回復したとはいえず、音楽家や演奏関係者たちの苦悩は続いている。
[器楽]名古屋市内に本拠を置く3つのオーケストラが活発に活動した。名古屋フィルハーモニー交響楽団は第506回定期演奏会(11月4日~5日、愛知県芸術劇場コンサートホール)を挙げよう。今年度末で音楽監督の座を退く小泉和裕がマーラーの交響曲第2番『復活』に全神経を傾注。オーケストラ、合唱団も鋭く感応して壮大な熱演を現出した。セントラル愛知交響楽団は「ハイドンのロンドン精神 Vol.3」(12月8日、電気文化会館ザ・コンサートホール)が秀逸。常任指揮者角田鋼亮の指揮下、ロンドン・セット全12交響曲中でも地味な第97番と98番に挑み、ハイドンのユーモアを外連味なく描き出した。愛知室内オーケストラでは音楽監督に就任した経験豊かな山下一史が就任披露の第31回定期公演(4月16日、三井住友海上しらかわホール)で早くも好相性を示し、シューマンの交響曲第2番をスケール大きく仕上げた。
11月4日~5日 愛知県芸術劇場コンサートホール
[室内楽]ピアノの桑野郁子、チェロの高木俊彰らの室内楽集団レーベインムジークの旺盛な活躍に指を屈する。全5回のフォーレ室内楽全曲演奏会(2月20日、電気文化会館ザ・コンサートホール)を完結後、シューマン室内楽全曲演奏会(6月12日、同)とプーランク室内楽全曲演奏会(8月14日、同)に着手、いずれも高い演奏水準を維持した。さらに高木は桑野と組んでベートーヴェンのチェロ作品全曲演奏会(11月19日・12月24日、同)で令和4年度名古屋市民芸術祭特別賞に選ばれた。
ピアノでは、名古屋市芸術奨励賞を受賞した石川馨栄子がリサイタルデビュー20周年記念のショパン作品演奏に詩情表現の進境を見せた(10月1日、同)。堀夏紀は「AMERICAN PIANO TRANS CRIPTION&SONATA」(11月15日、同)で、バーバーらアメリカ作品に留学経験の成果を披露。セントラル愛知交響楽団の「コンチェルトの夕べ」(8月22日、愛知県芸術劇場コンサートホール)でもガーシュインのピアノ協奏曲をニュアンス豊かに弾き切った。
11月19日 電気文化会館ザ・コンサートホール
[声楽]ヘンデルのオラトリオの上演を2つ。東海バロックプロジェクトの10周年記念企画「MESSIAH」(1月23日、三井住友海上しらかわホール)とヘンデル勉強会による『快活の人、沈思の人、中庸の人』(10月10日、東文化小劇場)で、後者は作曲当時の英語の発音を復元して歌うという有意義な試みだった。
名古屋二期会のモーツァルト『歌劇 フィガロの結婚』(10月15日~16日、愛知県芸術劇場大ホール)は支配・被支配の構図を生かした新演出が話題を集めた。愛知祝祭管弦楽団のワーグナー楽劇『トリスタンとイゾルデ』(8月28日、同コンサートホール)、愛知県芸術劇場プロデュースになるモーツァルト少年期の傑作オペラ『バスティアンとバスティエンヌ』(6月12日、同小ホール)の珍しい再演、バリトンの近野賢一リサイタル、シューベルトの歌曲集『冬の旅』(11月9日、ザ・コンサートホール)が企画、演奏ともに見事な出来栄え。近野は令和4年度名古屋市民芸術祭賞を受賞した。
