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- 2023年 Spring号
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美術批評/ライター 田中 由紀子 さん
美術に限らず、あらゆるイベントで新型コロナウイルス感染拡大防止対策が不可欠ではあったものの、様々な規制が緩和されてきた印象がある2022年だった。
2019年に「表現の不自由展」の是非が全国的な話題となった「あいちトリエンナーレ」は、「国際芸術祭あいち」と名称変更された。「表現の不自由展」をめぐる問題から名古屋市は共催とならなかったが、前回を上回る規模での開催となった。今回、会場となった一宮と常滑、有松地区では、地域の歴史や文化、産業から着想された作品が数多く並んだことが特徴的だった。
同時期には、一宮市旧林家住宅等にて「木曽川アートトライアングル 交錯するアート-日々の景色から見えるもの -」、瀬戸市菱野団地にて「瀬戸現代美術展2022」、長久手市各所で「ながくてアートフェスティバル」が行われた。この地域の作家が自ら発表の場を創出しようとするこうした展覧会は、芸術祭と並走しながらここ10年でじわじわと活発化しており、地域全体の文化力の向上につながる取り組みとして評価したい。
美術館では、愛知県美術館が「ミロ展――日本を夢みて」で、日本の書や民芸がミロの創作活動にいかに影響を及ぼしたかというこれまでにない着眼点で、ミロの初期から戦後の大作までを展観した。この企画により、副田一穂主任学芸員が西洋美術振興財団賞学術賞を受賞した。また、「2022年度第2期コレクション展」では、2021年7月に急逝した画家・設楽知昭の収蔵作品等を特集展示した。壁一面に配された43点から成る〈透明壁画、人工夢〉は圧巻で、絵とは何かを生涯にわたり考え続けた設楽の思索をなぞるような体験ができた。
名古屋市美術館は、「現代美術のポジション2021-2022」と「布の庭にあそぶ 庄司達」で東海エリアを拠点に活動する作家を紹介した。「布の庭にあそぶ 庄司達」では、作家の代表作である〈Navigation〉シリーズの 〈Arch〉、〈Level〉、〈Flight〉を初めて一堂に展示し、白い布の緊張と弛緩による心地よい空間を生みだした。
豊田市美術館「ゲルハルト・リヒター展」では、〈フォト・ペインティング〉、〈アブストラクト・ペインティング〉、〈カラーチャート〉等、ガラスや鏡を用いた作品をとおして、60年に及ぶ作家の実践を紹介したが、特筆すべきは作品と展示空間の関係性である。一枚の絵画は、天井高9.6m の大空間、階段を上った上階、上階の小窓と、見る位置や高さが変わることによりイメージを変化させ、新鮮な驚きと共に「見ること」の感動を得た鑑賞者も少なくあるまい。
ギャラリーでは、4月に小牧市から名古屋市に移転した名古屋造形大学の学内ギャラリーにて「just beyond」が開催。2021年に急逝した画家・登山博文による、あいちトリエンナーレ2010に出品された大作〈反射光〉、〈左と右〉が展示され、話題となった。筆者はこの展示を見逃したが、河合塾美術研究所に併設されるArt Space NAFで「登山博文 Drawing/ Tableau 2008-2010」を見たことにより、登山が描きだすイメージがどのように想起されたかを垣間見ることができた。
最後に、2021年12月末に上前津のスペースを閉じたガレリア フィナルテが、4月に栄で再開したことも付け加えておきたい。30年にわたり同時代の作家を精力的に紹介してきた同ギャラリーが、今後も名古屋の現代美術を支え続けることを期待したい。
